相模原市立学校による、PTA運営の適法性に関する照会に対する回答について(送付)【相模原市教育委員会】
受信トレイ
18:01 (45 分前)
To 生涯学習課, 学校教育課
PTA適正化推進委員会 横浜本部
事務局代表 佐藤 大 様
メールを拝読いたしました。
お問い合わせいただいた件について、相模原市教育委員会(以下「本市教育委員会」という)。として、各所管部局の見解を取りまとめた上、下記の通り回答させていただきます。
※「⇒」以降が、本市教育委員会の見解となります。
【照会事項】
1.PTA 入会手続きの適法性に関する詳細な解釈について
報告書では、PTA への入会は、民法第521 条に定める契約自由の原則に基づき、保護者とPTA 間の契約行為と解釈されるべきであり、その成立には民法第522 条が定める双方の明確な合意が必要であると指摘いたしました。
一部の学校で見られる「みなし加入」や「オプトアウト方式」は、保護者からの積極的な承諾を欠くため、契約成立の要件を満たさず、ひいては保護者の結社の自由(日本国憲法第21 条)を侵害する可能性も懸念されます。また、消費者契約法の趣旨から見ても、消費者の権利義務が明確でない、または消費者に不利益が生じる可能性のある条項は問題視されるべきと考えられます(消費者契約法第3 条、第10条)。
つきましては、御市教育委員会として、市内の公立学校におけるPTA 運営において、「みなし加入」や「オプトアウト方式」をどのようにご解釈され、これらの方式が適法であるとお考えになる法的根拠および具体的な理由について、詳細にご教示いただけますでしょうか。
もし、これらの方式が適法であるとのご見解をお持ちの場合、保護者の権利保護の観点から、どのような条件や配慮が必要であるとお考えでしょうか。
逆に、これらの方式が民法や消費者契約法の観点から問題があるとご認識の場合、教育委員会として、保護者の明確な同意を得るための具体的な手続きとして、どのような方法が最も適切であるとお考えでしょうか。例えば、書面による入会申込書の提出、電子的な同意取得システム、またはその他の方法が考えられますでしょうか。教育委員会として推奨される手続きの詳細について、ご教示ください。
⇒本市教育委員会としては、PTAが任意加入であることなどの重要な情報が事前に説明がなされていないことや、保護者の意思確認が行われていないことなどによる加入は適切ではないと考えます。
なお、入会手続きを行うにあたり、保護者の明確な同意を得るための手続き方法として、事前に適切な告知を行った上で、書面等による入会申込による手続きで意思確認を行うことが望ましいと考えます。
2.PTA 会費の徴収に関する法的根拠と手続きについて:
報告書では、学校がPTA の代理として会費を徴収する行為は、民法第113 条の無権代理に該当する可能性があり、法的な有効性を確保するためには、PTA と学校間の明確な委任契約の締結が不可欠であると指摘いたしました。委任契約がない場合、学校による会費徴収は法的根拠を欠き、保護者は支払いを拒否できる可能性や、既に支払われた会費の不当利得返還請求(民法第703 条)が生じる可能性も示唆いたしました。
御市教育委員会として、学校がPTA の委任契約なしにPTA 会費を徴収する行為の適法性について、具体的にどのようにご解釈され、その法的根拠についてどのようにお考えでしょうか。過去の裁判例や関連する行政指針などを踏まえたご見解を詳細にご教示ください。
⇒本市教育委員会としては、仮にPTAを事業者とみなした上で、学校がPTA会費の徴収等を行う場合においては、長年の慣例などからも、黙示の合意による委任契約がされておりますが、神奈川県教育委員会の「私費会計基準(第26条)」にも示されているとおり、会費の徴収においては、より明確化することが望ましいと考えます。
PTA と学校間で委任契約を締結する場合、委任の範囲(会費徴収、管理、会計処理など)、両者の責任範囲、会費の管理方法、および保護者への透明性の確保(会計報告の方法や頻度など)に関する事項について、教育委員会として契約内容に含めるべき重要な事項について、具体的にご指示いただけますでしょうか。
⇒本市教育委員会としては、仮にPTAを事業者とみなした上で、PTAと学校間で委任契約を締結する場合においては、まずは、業務委託契約書等の書面によりPTA会費の徴収を委任することを明示した契約を締結することが望ましいと考えます。
もし、委任契約がない状況で、学校がPTA 会費を徴収している事例が確認された場合、教育委員会として、速やかにどのような調査を行い、どのような指導や是正措置を検討されるでしょうか。また、保護者からの返還請求があった場合の対応についても、現時点でのご方針をご教示ください。
⇒本市教育委員会としては、該当する学校に対して聞き取りや関係書類の確認等により事実確認を行った上で、神奈川県教育委員会の私費会計基準等の関係規定を参考に指導助言を行うことが適当と考えます。
なお、保護者から返還請求がなされた場合については、該当事象の内容を踏まえた上で、学校や請求者と調整しながら、対応方法について検討してまいりたいと考えます。
3.学校名簿の利用に関する個人情報保護法の解釈と運用について:
報告書では、学校が保有する児童・生徒・保護者の個人情報は、本来、学校教育目的のために収集されたものであり、個人情報保護法第69 条に基づき、利用目的以外の目的での利用や提供は原則として禁止されるべきであると指摘いたしました。PTA は学校とは別の団体であるため、保護者の明確な同意なしに学校がPTA に名簿を提供することは、個人情報保護法第23 条第1 項に違反する可能性が高いと考えられます。文部科学省も、PTA に対する個人情報の提供には本人の同意が必要であるとの見解を示しています。
御市教育委員会として、学校がPTA に対し、保護者からの個別かつ明確な同意なしに学校名簿(氏名、連絡先等)を提供することの適法性について、個人情報保護法のどの条項に照らし、具体的にどのようにご解釈されますでしょうか。
⇒本市教育委員会としては、学校が保有している学校名簿(氏名、連絡先等)を保護者からの個別かつ明確な同意なしに提供する行為は適切ではないと考えます。
PTA が会費徴収、会員管理、またはその他の活動目的で個人情報を必要とする場合、学校が保護者から同意を得るにあたって、提供する情報の範囲、利用目的、PTA における管理方法、不同意の場合のPTA 活動への参加への影響などについて、どのような情報を具体的に保護者に説明し、どのような形式で同意を得るべきであるとお考えでしょうか。教育委員会として推奨される同意取得の手順や注意点について、詳細にご指示ください。
⇒本市教育委員会としては、学校が個人情報を提供する場合において、個人情報保護法に規定される個人情報取扱事業者として、利用提供範囲や利用目的、管理体制等を保護者に明示した上で、書面による意思確認を行うことが望ましいと考えます。
また、各PTAに対しても、個人情報保護法等の法令を理解した上で、法令順守のうえでの運営を働きかける必要があると考えます。
学校がPTA に名簿を提供する際の同意取得状況について、教育委員会として、各学校に対し、どのような方法で確認・管理を義務付け、どのようにその状況を把握していく方針でしょうか。また、同意を得ていない名簿提供が判明した場合の措置についてもご教示ください。
⇒本市教育委員会としては、特段の調査はしておりませんが、神奈川県教育委員会作成のPTAの加入における留意に関する通知や、「PTA活動のためのハンドブック」を各学校・PTAへ毎年送付することで、周知を図っております。
なお、同意を得ていない個人情報の提供が判明した場合については、状況に応じて必要な指導や助言をしてまいりたいと考えます。
PTA が独自に個人情報を取得・管理する場合においても、個人情報保護法を遵守し、適切な安全管理措置を講じる必要があると考えられますが、教育委員会として、PTA に対する個人情報保護に関する指導や支援について、どのような方針をお持ちでしょうか。
⇒本市教育委員会としては、前述のとおり、神奈川県教育委員会作成のPTAの加入における留意に関する通知や、「PTA活動のためのハンドブック」を各学校・PTAへ毎年送付することで、周知を図っております。
上記取組の他に、PTA加入における保護者からの意思確認の明確化や個人情報保護の法令順守を図ることを目的に、「入会申込書・個人情報取扱同意書」の参考様式の作成・周知等について、本市教育委員会として検討してまいりたいと考えております。
本市教育委員会といたしましては、今回いただいた御意見を踏まえた上で、
PTA活動の主旨を改めて認識していただくとともに、法令順守のうえで適切に運営を行っていただくよう、各学校・PTA等へ引き続き働きかけてまいります。
以 上
生涯学習課 :042-769-8287(直通)
メール送付先:shogaku@city.sagamihara.kanagawa.jp
学校教育課 :042-769-8284(直通)
メール送付先:gakkokyouiku@city.sagamihara.kanagawa.jp