徳島市教育委員会事務局
学校教育課·社会教育課
PTA入会手続き等の法的見解について(回答)
令和7年8月3日付けで照会のありましたことについて、次のとおり回答いたします。
1 PTAの入会契約の成立要件に関する法的見解について
【照会事項】
保護者の明示的な申込み意思表示と PTAの承諾がないまま、学校側が児童の入学をもって一律に「会員」とみなす運用が多くの学校で行われています。このような「みなし入会」方式について、民法第522条および消費者契約法に照らし、契約が成立していると判断される法的根拠があるか、教育委員会としての見解をお示しください。
【回答】
教育委員会といたしましては、PTAの入会に際しては、保護者の明示的な申込みの意思表示及びその意思表示に対するPTAの承諾が必要と考えております。
このため、毎年、学校長に対し「PTAの加入は任意であること」を伝え、強制加入とならないよう、指導を実施しております。
2 学校によるPTA会費の徴収行為が無権代理に該当するかについて
【照会事項】
学校が PTAとの間でPTA会費の徴収業務に関する準委任契約を結ばずに、慣例的に児童名簿等を用いて会費を代行徴収しているケースがあります。学校が正式な代理権を持たずにPTAの業務を代行している場合、民法第113条に基づく無権代理に該当すると考えられますが、教育委員会はこの点をどのように評価していますか。
【回答】
学校がPTAの会費徴収業務を行う場合は、学校とPTAが適切な委任契約または準委任契約を結ぶことが適当であると考えております。
3 入会申込書による保護者および教職員の明確な意思確認の必要性について
【照会事項】
PTA が任意加入団体である以上、契約の成立には個別の申込書や同意書による明示的な加入意思の確認が必要と考えられます。現在多くの学校で申込書を徴収していない状況について、教育委員会として是正の必要性を認識されていますか。
【回答】
民法上、契約は書面がなくても成立するものではありますが、教育委員会といたしましては、PTAへの入会に際し、書面等による明確な意思確認を得ることが適当であると考えております。
この度のお問い合わせを契機として、学校やPTA団体に対し、是正の必要性を伝えてまいります。
4 個人情報保護法に基づく児童名簿·連絡個票の利用目的逸脱について
【照会事項】
PTA が入会申込書を取得しておらず、申し込んだ保護者·教職員が誰であるかを特定·管理していない状態で、学校が児童名簿や連絡個票を用いてPTA会費の徴収等を行っている実態が、多くの学校で確認されています。これらの名簿情報は、本来、入学手続きや教育活動のために学校が収集したものであり、保護者の同意なくPTAという外部団体の金銭徴収業務に転用することは、個人情報保護法第69条(利用目的の制限)に違反するおそれがあります。加えて、PTA自身が会員の氏名を把握していない状態で、学校が本人同意なしに代理徴収的な行為をしていることは、情報主体(保護者)の権利を大きく侵害する状況であると考えます。貴教育委員会として、このような運用の違法性または法令抵触の可能性に対する認識、および是正の必要性や今後の対応方針について、どのようにお考えでしょうか。明確なご所見をお示しください。
【回答】
学校が保有する個人情報は、個人情報保護法に沿って適正に管理されるべきものであり、これを保護者の同意なくPTAに提供することは違法であると考えております。このため、教育委員会では、毎年、学校長に対し「PTAで用いる個人情報はPTAが収集管理すべきものである」旨を伝え、指導を実施しております。
5 PTA の運用に関する教育委員会の是正指導責任について
【照会事項】
学校がPTAと一体的に関与し、会費徴収や施設使用を支援している実態を踏まえれば、PTAの違法または不適切な運用が学校教育の一環と認定される可能性があります。学校教育法第137条、地方教育行政法第23条および24条、教育基本法第16条に基づき、教育委員会が是正指導を行う責任があるとお考えでしょうか。
【回答】
PTA は公の支配に属さない社会教育関係団体ですが、学校運営に密接に関わるものであるため、組織運営上の課題等に対しては必要に応じて相談や助言を行うなど、教育委員会として適正な運営を確保するために一定の関与を行う立場にあると考えております。
6 任意加入·法令遵守が確保されるまでの暫定的措置に関する方針について
【照会事項】
PTAが保護者の意思確認を適切に行わず、会員名簿すら把握しないまま会費徴収や施設利用を継続している状態は、法令違反の懸念が濃厚です。教育委員会として、是正がなされるまでの間、学校による施設提供や会費徴収への協力を停止する措置を講じる予定はありますか。
【回答】
今後とも助言や指導を継続するとともに、必要な是正措置が適切に講じられない団体に対しては、早期の是正につながるような措置も検討するなど、適切な是正指導とPTA 運営の適正性の確保に努めてまいりたいと考えております。
以上