本調査で提供された文書を分析した結果、甲賀市立小中学校のPTA(一部ではPTLを含む)の運用は、希望ケ丘小学校(PTA組織なし)を除く大半の学校で実質的な強制性が「非常に高い」と評価されます。
PTAが「任意団体」であるという法的・建前の側面とは裏腹に、その運用実態は、保護者が「入らない」という選択を極めて困難にさせる、あるいは実質的な不利益を被ることを前提とした仕組みとなっています。
強制性を高める要因は、主に以下の3点に集約されます。
全校で統合徴収が常態化: ほとんどの学校で、PTA会費は給食費、教材費、積立金といった学校諸費と合算され、一括で口座振替されています。これは、任意団体の会費を公的機関(学校)が徴収代行し、かつ必須の費用と統合することで、保護者に対し「支払わない」という選択肢を実質的に封じ込める効果を生んでいます。
「任意」の文言の形骸化: 「任意ですが協力をお願いします」といった文言を記載する学校(綾野小、貴生川小など)も存在しますが、会費の統合徴収が行われている現状では、この文言が「入らない権利」を実質的に担保しているとは言えません。
「入会申込書」の不在: ほとんどの学校で、保護者に対し入会か不入会かを明確に問う書面(入会申込書や明確な不入会選択フォーム)が存在しません。 代わりに、児童の入学と同時に自動的に会員となることを前提とした書類(会費徴収案内、委員選出投票用紙など)が配付されています。
「除外」「免除」規定の存在: 役員選出の際に、過去の委員経験者や兄弟姉妹がいる会員を「除外」(水口中、信楽中、土山小、油日小など)や、会員の一部を「免除」(甲南第三小)とする規定が存在します。この「免除・除外」の仕組み自体が、非対象者には何らかの役が割り当てられる義務がある、という強烈なメッセージを暗に発しています。
抽選による割り当て: 城山中学校のように選出方法を「抽選」にすることで負担を公平にしようとする取り組みも、「入会した以上は役割を拒否できない」という強制的な前提の上で成り立っています。
公私の分離の欠如: ほとんどの学校で校長、教頭、教務、事務職員といった学校職員がPTAの役員や事務局に名を連ねており、組織運営と事務執行を学校側が担っています。
極端な委任の事例: 特に貴生川小学校では、PTA会長が校長に対し「会費の集金および督促」「経理事務」を委任する契約書が存在します。これは、任意団体の私的業務を公立学校が代行する公私の分離原則からの著しい逸脱であり、PTAが「学校運営機構の一部」として機能している実態を明確に示しています。
本調査結果から、甲賀市内のPTAが真に任意団体として適正に運用されるためには、以下の根本的な改革が必要であると結論付けられます。
会費徴収の分離・廃止: PTA会費の学校徴収金との統合引落しを即刻廃止し、PTAが独自に金融機関等を通じて徴収を行う、または学校は一切関与しない仕組みに移行する必要があります。
入会意思の明確化: 「入会を前提とする」運用を改め、入会を希望する者のみが入会申込書を提出する(オプトイン方式)に切り替える必要があります。
役割の強制の排除: 役員・委員の選出を「割り当て」「抽選」「除外」「免除」といった強制的な仕組みから、完全に立候補制・募集制へと移行し、役割を負うことが強制ではないことを明文化する必要があります。
例外的な動きとして、甲南中学校が上部団体からの脱退や「世話役」制への移行、城山中学校が「入会/不入会」の選択肢を設けるなど、改善に向けた努力も見られますが、現時点では会費徴収の抱き合わせが残る限り、保護者の「入らない自由」が実質的に確保されているとは言い難い状況です。
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