PTA適正化推進委員会 事務局代表 佐藤 様
下記のとおり回答いたします。
1.PTAの入会契約の成立要件に関する法的見解について
保護者の明示的な申込み意思表示とPTAの承諾がないまま、学校側が児童の入学をもって一律に「会員」とみなす運用が多くの学校で行われています。このような「みなし入会」方式について、民法第522条および消費者契約法に照らし、契約が成立していると判断される法的根拠があるか、教育委員会としての見解をお示しください。
→ 町内の小中学校のPTAでは、入学説明会の折にPTA会長が新入学生の保護者に対して活動の説明をしているが、任意団体であること、入会の同意については確認しておらず、民法522条における契約成立の法的根拠とはなっていないと認識しています。
また、ご指摘のとおり消費者庁の見解ではPTAへの入会は消費者契約法上の消費契約にあたる可能性があるとされていますので、こちらも現在の取り扱いは、契約成立の法的根拠とはなっていないと認識しました。
2.学校によるPTA会費の徴収行為が無権代理に該当するかについて
学校がPTAとの間でPTA会費の徴収業務に関する準委任契約を結ばずに、慣例的に児童名簿等を用いて会費を代行徴収しているケースがあります。学校が正式な代理権を持たずにPTAの業務を代行している場合、民法第113条に基づく無権代理に該当すると考えられますが、教育委員会はこの点をどのように評価していますか。
→ 町内の小中学校のPTAでは、教員以外のPTA役員が徴収を実施しており、学校による徴収業務は実施されておりません。
なお、町教育委員会の評価としては、照会文にありますとおり、PTAは保護者と教職員が組織している団体であり、教職員も保護者と同じPTA会員であると認識しています。その観点から考えると、学校で徴収に関わっている教職員がPTA役員である場合は、民法第113条における無権代理には該当しないのではないかと思慮します。
3.入会申込書による保護者および教職員の明確な意思確認の必要性について
PTAが任意加入団体である以上、契約の成立には個別の申込書や同意書による明示的な加入意思の確認が必要と考えられます。現在多くの学校で申込書を徴収していない状況について、教育委員会として是正の必要性を認識されていますか。
→ 本調査において、是正の必要性を認識いたしました。町内の小中学校のPTAにおいても、PTAへの加入に際して申込書の徴収を行っていない状況です。民法第522条第2項に規定しているとおり、契約については、必ずしも書面作成する必要はありませんが、不要な諍いを避けるためにも、書面で明示することについて必要と認識しました
4.個人情報保護法に基づく児童名簿·連絡個票の利用目的逸脱についてPTAが入会申込書を取得しておらず、申し込んだ保護者·教職員が誰であるかを特定·管理していない状態で、学校が児童名簿や連絡個票を用いてPTA会費の徴収等を行っている実態が、多くの学校で確認されています。これらの名簿情報は、本来、入学手続きや教育活動のために学校が収集したものであり、保護者の同意なくPTAという外部団体の金銭徴収業務に転用することは、個人情報保護法第69条(利用目的の制限)に違反するおそれがあります。加えて、PTA自身が会員の氏名を把握していない状態で、学校が本人同意なしに代理徴収的な行為をしていることは、情報主体(保護者)の権利を大きく侵害する状況であると考えます。貴教育委員会として、このような運用の違法性または法令抵触の可能性に対する認識、および是正の必要性や今後の対応方針について、どのようにお考えでしょうか。明確なご所見をお示しください。
→ 町内の小中学校PTAでも、入会申込書を取得していないため、学校の保有する児童名簿をもって確認しています。PTA自体は貴会のメール本文にあるとおり「PTAは、教職員の役員参加、学校施設の恒常的利用、学校職員による会費徴収など、学校教育活動と実質上一体化」している団体ではありますが、その入会について明確な意思表示がなされていない状況において、本人の同意なく利用されることは個人情報保護法に違反する恐れがあると理解します。今後は、先の回答でも述べているとおり今後は入会の意思確認を書面で行う必要性があることを情報提供いたしますので、PTAが自ら取得した情報を使用して会費の徴収等の活動が行われることになるかと思います。
5.PTAの運用に関する教育委員会の是正指導責任について
学校がPTAと一体的に関与し、会費徴収や施設使用を支援している実態を踏まえれば、PTAの違法または不適切な運用が学校教育の一環と認定される可能性があります。地方教育行政法第10条に基づき、教育委員会が是正指導を行う責任があるとお考えでしょうか。
→ 当然ながら、PTAと学校は別組織であり、PTAが違法または不適切な運用を行っていたとして、そのことが学校教育の一環として認定されることは、承服しかねる部分かと思います。
また、PTAは公益社団法人日本PTA全国協議会も明言しているとおり社会教育関係団体ですので、教育委員会としてPTAに対し指導助言を出来る根拠法令は、社会教育法第11条によると考えており、その条文にあるとおり求めに応じとなるため、今回のご指摘に対して教育委員会としては、PTAに対して情報提供を行い、PTAからの求めがあれば指導助言を行うことになると考えています。
5.求められる対応
教育委員会におかれましては、地方教育行政法第10条の規定に基づき、以下の対応をご検討いただきたく存じます:
*PTAが任意加入団体であることを明確に周知すること
→PTAに対し保護者に明確に説明する必要性があることについて情報提供します。
*明示的な入会申込書の導入を学校に徹底させること
→PTAに対し入会申込書などのような意思確認の書類の導入の必要性について情報提供します。
*個人情報の適正な利用に関する運用見直しの指導
→PTAに対し入会申込書などのような意思確認の書類の導入の必要性を情報提供する際に個人情報保護法について
も説明いたします。
*無権代理行為の是正と、委任契約の明文化指導
→教員以外のPTA役員が徴収しているため、対応予定はありません。
*PTAの法令違反が解消されるまでの施設利用や協力体制の見直し
→特段の措置を講じる予定はありません。
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